石油開発の最前線から

石油を中心としたエネルギー・資源開発について考える

石油埋蔵量が減らないカラクリ

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(写真はサウジアラムコのHPより)

石油の埋蔵量はずっと40年?

「石油の埋蔵量は40年しかない」と、皆さんも一度は聞いたことがあるかもしれない。一昔前は、石油の埋蔵量は40年分しかないと新聞等で騒がれていた記憶がある(一説によれば1960年代から)。確かに、石油の埋蔵量が40年分しかないというのは計算結果として間違いない事実ではある。しかし、それだけを聞いて鵜呑みにしてしまうのも正しい捉え方とは言えない。なぜなら、石油の埋蔵量は毎年増えたり減ったりの変動を続けているからだ。今回は、埋蔵量がなぜ減らないのかについて、そのカラクリを紹介したい。

石油埋蔵量が変動する要因

石油埋蔵量は様々な要因によって変動する。つまり、毎年増えたりもするし、減ったりもする。埋蔵量が変動する主要因としては、以下のものがある。

  • 探鉱による新規油田の発見
  • 既発見油田の追加開発(追加掘削、施設改修・増強、IOR/EOR)
  • 石油価格の変動
  • 開発・操業コストの変動
  • 水平坑井や水圧破砕技術などの技術革命(シェール革命)

埋蔵量の定義とは

埋蔵量がなぜ減らないのかを知るためには、まずは埋蔵量とは何ぞやを知っておく必要がある。まずはウィキペディアからその意味を見てみよう。

可採埋蔵量 - Wikipedia

可採埋蔵量(かさいまいぞうりょう)または経済可採埋蔵量(けいざいかさいまいぞうりょう)は、地下に存在する石油天然ガスなどといった地下資源の埋蔵量のうち、「現在の市価で」技術的・経済的に掘り出すことができる埋蔵総量から、既生産分を引いた量のこと。 

埋蔵量について、とても的確な説明がされている。次に、PRMS 2007 (Petroleum Resources Management System) からその意味を見てみよう。PRMSとは、SPE, AAPG, WPC, SPEEなどの業界団体が合同で策定した埋蔵量評価基準であり、世界中の多くの石油企業によって自社の持つ埋蔵量を評価するために使用されている統一基準である。以下に、PRMS 2007レポートに示されている埋蔵量の基準を抜粋する。

Petroleum Reserves and Resources Definitions | Society of Petroleum Engineers

RESERVES are those quantities of petroleum anticipated to be commercially recoverable by application of development projects to known accumulations from a given date forward under defined conditions.Reserves must further satisfy four criteria: they must be discovered, recoverable, commercial, and remaining (as of the evaluation date) based on the development project(s) applied. Reserves are further categorized in accordance with the level of certainty associated with the estimates and may be sub-classified based on project maturity and/or characterized by development and production status.

つまり、埋蔵量として認定されるためには、以下の4つの条件が満たされている必要がある。

  • 石油・ガスの集積物が発見されていること
  • 技術的に開発・生産可能であること
  • 経済的に回収できること
  • 地下に残存していること

つまり、地下にただ "ある" だけでは、埋蔵量として認められない。ここに埋蔵量が減らないカラクリが存在する。

埋蔵量とはあくまで人間が決めた恣意的な指標

地下にただ "ある" だけの石油・ガスに対して開発計画を立案し、技術的・経済的に開発可能であることを検証すれば、それを埋蔵量として計上できる。また、開発・操業費用の低下や石油価格の上昇などによって既存設備の経済限界が延びれば、その延命期間中に生産される石油・ガスも埋蔵量に追加計上できる。加えて、中東地域では、開発の手が伸びていない "眠ったままの" 石油・ガスが膨大にあると言われている。そして、米国を発端としたシェール革命が世界中へと拡大すれば、さらなる埋蔵量の増加が見込まれる。つまり、埋蔵量とは地下に存在する石油・ガスの絶対値的な量を示すものではなく、あくまでも人間が開発するという意思を示した石油・ガスのみを表す指標にすぎない。よって、そこには人間による恣意性や石油会社各社の戦略が潜んでいるのも確かである。

 

次回は、世界各地域の埋蔵量分布について紹介したい。