石油開発の最前線から

石油を中心としたエネルギー・資源開発について考える

スーパーメジャーが予測する「石油の未来」

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(写真はBPのホームページより)

BPが "Energy Outlook (2017 edition)" を公開

先日、石油メジャーの一角、BP(旧British Petroleum、かつての英国国営石油)が2017年版のEnergy Outlookを公開した。

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/energy-outlook.html

このレポートでは、2035年までの長期的な世界経済の展望や、各エネルギーの需要・供給予測について、BPが独自に調査を行った結果を纏めている。同様のレポートはアメリカ連邦政府の情報機関や同業他社の石油企業も発行しているが、世界をけん引する巨大石油企業という観点から、BPが今後の世界経済や石油需要をどのように考えているのかを知る上で、本レポートは重要な資料となる。BPが行った将来予測と、それに関わる幾つかのキーポイントについて紹介していきたい。

  • 世界経済の展望
  • 世界全体のエネルギー需要
  • 種別ごとのエネルギーの需要
  • 主要課題

その1:世界経済の成長

 エネルギー予測を行うにあたって、まず大前提となるのが、世界経済が今後どう推移するかである。BPの予測では、

  • 2015年から2035年まで、世界人口は年間約1%ずつ増加する
  • 2015年から2035年まで、世界の実質GDPは年間3.5%ずつ成長する
  • 実質GDPの成長率の内訳は、1%は人口増加によるもの、残りの2.5%は生産性の向上によるもの。また、地域別でみると、成長率のうちの2%は中国とインドが占める

これらの前提に基づくと、2035年の世界の実質GDPは、現在のおよそ2倍になっている計算である。

その2:世界全体のエネルギー需要

今後約20年にわたって世界経済は緩やかに成長していくと観測しているが、一方でエネルギー需要については以下の見通しを立てている。

  • 世界全体のエネルギー需要は年間約1.3%ずつ上昇する。技術革新やエネルギー効率の向上によって、消費量上昇率は徐々に緩やかになっていく
  • 地域別でみると、中国、インドを中心とした新興国では大きな伸びの見せ、OECD(先進国)は横ばい
  • 2035年には世界全体実質GDPは2015年の2倍に増大すると予測されるものの、エネルギー消費量は30%程度の上昇に留まる

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種別ごとのエネルギーの需要

BPはエネルギーを以下の6種類に区分し、それぞれの需要を予測している。

全ての種別において、エネルギー需要は引き続き増加する傾向にあるとしている。各エネルギーのシェアは以下の通り(2015年と2035年のシェアの比較)

  • 再生可能エネルギーは3%から10%へと増加する
  • 水力は7%のまま横ばい
  • 原子力は4%から5%へと増加する
  • 石炭は29%から24%へと減少する
  • 天然ガスは24%から25%へと増加する
  • 石油は32%から29%へと減少する

再生可能エネルギー(風力、太陽光など)については今後大きな成長が見込まれるとしている。

また、エネルギー需要の用途は以下の通り。

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主要課題

世界のエネルギー需要に大きな影響を与える要因について、レポート中で分析を行っている。ここでは、その一部を紹介する。

  • 電気自動車やハイブリット車の台頭、および在来車の燃費の向上が、エネルギー効率の向上に大きく貢献する。
  • 中東、旧ソ連諸国、北米、中南米を中心として、在来型・非在来型の石油資源は豊富な余力がある。OPEC, ロシア、米国の3つの地域によって、2035年の石油供給のシェアは65%に達するとされる。
  • 今後、米国とオーストラリアを中心にLNGの供給が増大し、主要消費地域であるアジアに向けて輸出される。

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結論

結論として、化石燃料(石炭、石油、天然ガス)は世界の主要エネルギー源として、引き続き消費されることとなると示している。また、エネルギー消費の増大や経済成長によって、CO2の排出量についても年間0.6%ずつ増加し、2035年の総排出量は2015年当時と比べて13%増えることになるようだ。

 

注意書き

本記事で示されている内容は20年にわたる長期的な将来予測であり、さまざまな不確実要素を受けることになります。将来予測については、示された内容と実際に生じる結果とで大きな乖離が生じる可能性があることをご承知おきください。